アジャイルは、アダプティブ(適応型)でインクリメンタル(漸増型)な開発プラクティスを通じてエンジニアリングチームの生産性向上を目指すソフトウェア開発アプローチです。開発者と顧客の連携を重視するアジャイルは、ユーザー関係の価値を高めるのに必要な「高品質な製品」づくりに欠かせません。
アジャイルは開発者が採用する開発手法の一つですが、品質エンジニアリングとソフトウェアテストも、変化する顧客のニーズに迅速に適応するための高速化や反復性向上などの点から、アジャイルの目標と強い関連性を持っています。mablが実施した 2022年DevOpsにおけるテストの実態調査 では、エンジニアリング、QA、リーダーシップの約600人の開発·品質の専門家に、組織が実社会でアジャイルに成功できるテスト戦略と自動化導入についての情報を提供していただきました。
実態調査から、テストと自動化は一般的にはアジャイルの範疇外だと考えられているものの、実際にはパイプラインとテストの自動化がアジャイルの目標達成を支えていることが分かりました。
「Fail-fast (早く失敗せよ)」という姿勢はアジャイルアプローチの核ですが、チームのデプロイ頻度はパイプラインの自動化によって決まるようです。その理由は、ワークフローの自動化を効果的に設計·採用することで、スピードの求められるようなチームでも、プロセスの一貫性を維持しやすくなるからです。
特に、自動化によってテストが改善されると、次のような結果がみられました。一般的に、テストの管理はQA、開発者、プロダクトマネージャーが担っており、アジャイルの範疇外とされているものの、実際には、テストカバレッジの改善がアジャイルの成果を左右しています。上のグラフから分かるように、優れたもしくは良好なテストカバレッジを持つチームは3倍もデプロイ頻度を50~100%上げる傾向にありました。これは目を見張るべき数字です。
テストおよびテストの自動化は、漸増的な変化を支え、コードをカスタマーエクスペリエンスに連携できることから、アジャイル導入において重要な役割を担っています。DevOps におけるテストの実態調査から、テストカバレッジが向上すると、チームは開発の早い段階でバグを発見できるようになり、それが修正にかける時間の短縮につながるので、ユーザーへの悪影響を軽減させられることが分かりました。
自動テストによって開発の早い段階でバグを発見することで、アジャイル開発の重要な目標である「高速で反復可能なフィードバックループの作成」が可能になります。特にユーザーエクスペリエンス全体を検証するために設計されたテストの結果により、開発者はスプリントサイクルの早い段階で顧客のニーズを定量化できます。報告書から、欠陥やバグの発見が早ければ早いほど、解決もより早い段階で行うことができることが分かっています。
現状のテストカバレッジについて「優れている」または「良い」と回答したチームは、最小限のテストカバレッジしか持たないチームよりも1営業日以内にバグを修正できる確率が非常に高くなります。開発者は、すばやく問題を解決することで、ユーザーの不満にすかさず対応し、より良い製品へと改良することができます。テストの迅速化と自動化によって、開発プロセスの早い段階にユーザーエクスペリエンスを組み込み、開発スピードを落とさずに迅速にフィードバックへの対応ができるようになるのです。
テスト自動化の進歩は、加速化する開発サイクルにユーザーの視点をより幅広く組み込めるのに役立つとして期待されています。アクセシビリティテストやパフォーマンスなどの非機能自動テストは、2023年に自動化を優先したいテストとして 上位にランクしました。
パイプラインの自動化、特にテストの自動化によってフィードバックサイクルが速くなり、カスタマーエクスペリエンスが向上します。このデータによって、パイプラインとテストの自動化が消費者にどう影響しているかが分かります。
パイプラインの自動化が進んでいない組織が、ユーザーにポジティブな体験を届けることのできる確率は五分五分ですが、すべてまたはほとんどのワークフローが自動化されている組織の4分の3が、顧客満足度は高いと答えています。
アジャイルはツールよりも人を重視します。しかし、自動化、中でもテストの自動化は、開発プロセスの早い段階でユーザーエクスペリエンスを統合するのに有効なツールと言えます。カスタマージャーニーを正確に反映する拡張されたテストカバレッジによって、開発者はフィードバックを早い段階で得て、ユーザーのニーズに応じて即座に製品に取り入れることができます。mablの『2022年DevOpsにおけるテストの実態調査報告書』で、アジャイル導入に成功したチームが自動化をどのように取り入れ、より迅速で顧客を重視した開発サイクルを可能にしているのかご覧ください。
2022 年版 DevOps におけるテストの実態調査報告書にて、実社会におけるDevOps 導入の状況や、組織がどのようにカスタマーエクスペリエンスを向上させアジャイル化を進めているかをご覧いただけます。